四の五の

OFF派生のまとめとか洋ゲーの和訳とか

SpaceCommunist版OFFtale(中立ルート:ニューホーム)

SpaceCommunist氏作成のOFFtaleの邦訳記事です。
※UNDERTALEについては公式日本語版準拠ですが、OFFの世界観に合わせるため漢字メインにしています。
※OFFについては非公式日本語版未プレイにつき個人訳準拠です。

(前→ホットランド その3
(次→二人の王

●出典OFFtale AU - New Home

 

 

バッター
 「ハロー! わたしは庭にいるよ。」
 「もし何か打ち明けたいことがあるなら……」

バッター
 「……遠慮せずわたしのところへ来てほしい!」
 「カギはキッチンと廊下にある。」


 -昔々、遺跡に一人のニンゲンが、我らがベータと共に落ちてきました。
 -落下して大怪我を負ったニンゲンは、大声で助けを求めました。



 (あなたは鍵を拾ってポケットに入れた。)


 -王様の息子のアズリエルが、そのニンゲンの声を聞きつけました。
 -アズリエルは二人を城へ連れて帰りました。


 -やがて、アズリエルとニンゲンは兄弟のようになりました。
 -王様と女王様は、ニンゲンを我が子のように慈しみました。
 -地底の世界は希望に包まれました。



 (あなたは鍵を拾ってポケットに入れた。)


バッター
 ……。



 (恐怖に満ちている。)

バッター
 ……。


 -しかし……ある日……
 -ニンゲンが重い病気にかかりました。


 -病床のニンゲンは、ひとつだけお願いをしました。
 -故郷の花が見たい。
 -しかし、私たちにはどうすることもできませんでした。


 -その翌日……
 -ニンゲンは亡くなってしまいました。


 -悲しみに暮れたアズリエルは、ニンゲンのタマシイを取り込みました。
 -アズリエルは、恐るべき力を持った存在へと姿を変えました。

 -そばにいたベータは暴走し、タマシイそのものと化しました。混乱の中、ベータは忽然と消えてしまいました。
 -その日二度目の、大いなる喪失の瞬間でした……


 -ニンゲンのタマシイを取り込んだアズリエルは、バリアを抜けました。
 -ニンゲンの亡骸を抱え、夕陽の中を進んでゆきました。
 -ニンゲンの故郷を目指して。


 -アズリエルは村の中心に辿り着きました。
 -そこには、金色の花畑がありました。
 -アズリエルはその上に、ニンゲンの亡骸を載せてやりました。


 -突然、叫び声が響き渡りました。
 -村人たちがニンゲンの亡骸を抱えたアズリエルを見つけたのです。
 -彼らは、アズリエルがニンゲンの子を殺したと思ったのでした。


 -村人たちは捨て身でアズリエルを攻撃しました。
 -アズリエルは何度も何度も打たれました。
 -アズリエルには、村人たちを滅ぼす力がありました。

 -それでも……
 -アズリエルは反撃しませんでした。

 -ニンゲンの亡骸をしっかり抱えて……
 -微笑みながら、その場を立ち去りました。

 -傷ついたアズリエルは、何とか家に辿り着きました。
 -城に入るなり、アズリエルは倒れこんでしまいました。
 -その塵が、庭に降り注ぎました。

 -王国は絶望に包まれました。
 -王様と女王様は、一晩のうちに二人の子供を亡くしたのです。
 -ニンゲンはまたしても、私たちから全てを奪っていきました。

 -王様は決心しました。この苦しみを終わらせる時だと。
 -ここに落ちてくるニンゲンは、誰一人とて生かしてはおかない。
 -必要なタマシイが手に入れば、バリアを破壊することができる。

 -それはもう、遠い日のことではない。

 -アズゴア王が、私たちを解放してくれる。
 -アズゴア王が、私たちに希望をくれる。
 -アズゴア王が、私たちを救ってくださる。

 -あなたも、笑って。
 -胸が躍るでしょう?
 -幸せでしょう?

 -あなたはもうすぐ、自由になるのだ。


パピルス
 ……。

パピルス
 やあ……
 バッター?

パピルス
 ずいぶん経ったよな?
 オレさまたちがスノーフルで会ってから。

バッター
 ……。

パピルス
 オレさまがロイヤル・ガードの隊長になるだなんて、あのときのオマエは信じたかな?

パピルス
 想像してみてよ!
 オレさまの長年の夢がたった数時間で叶っちゃったんだ!

パピルス
 ……。

パピルス
 あぁ、それが何だ。

パピルス
 お祝いしてくれるトモダチがいなきゃ、成功もほろ苦い。

パピルス
 夢を叶えるためにみんなが犠牲にならなきゃいけなかったならなおさら。

パピルス
 いや、そもそも……
 オレにはトモダチなんかいなかったんだ……

パピルス
 最初から、家族だけ……
 オレとサンズの二人きり。

パピルス
 でもそれ以上に……
 オレはこれっぽっちも「偉大なパピルスさま」なんかじゃなかった。

パピルス
 パピルスですらない。
 オレは……「彼」。
 おかしなモンスター。

パピルス
 ……。

パピルス
 けどもっと最悪なのは、みんなとトモダチになるチャンスすら今はもう残されてないってことだ。

パピルス
 最初は、昔のことだけど叔父さん……
 そして、一番オレに近かったサンズ……

パピルス
 オレを指導してくれたアンダイン……
 その他の、たくさんの人たち……

パピルス
 守るべき人が誰もいないなら、ロイヤル・ガードになることに何の意味がある?

パピルス
 ……。

パピルス
 でも、何より最悪なことは何だと思う?

パピルス
 オレはロイヤル・ガードの隊長。
 モンスターを守り、犯罪者に罰を与えるのがオレの役目。

パピルス
 そして、オレの知り合いをみんな独りで殺しちゃったヤツが、オレを見てるっていうのに……

パピルス
 オレは……

パピルス
 オレは、オマエを殺そうと思うことすらできない。

パピルス
 それが、オレのことについて考えていくうちに分かった、恐ろしい真実。

パピルス
 前から、アンダインやサンズが何度もオレに言い聞かせようとしてたんだ……

パピルス
 ……オレじゃ弱すぎて反撃できないって。
 成すべきことを成せないって。

パピルス
 ……。

パピルス
 ……でも……
 希望はあるとオレは思ってる。

パピルス
 心の奥底では……
 まだ、オマエを救える気がしてるんだ。

パピルス
 それは何かに支配されるとか、信念とかではないと思う。

パピルス
 オマエがどんなことに直面してきたのか。
 どんな悪夢を経験してきたのか、オレには知りようがない。

パピルス
 でも、みんな大なり小なり大変な目に遭ってるものなんだってことはよく知ってる。

パピルス
 サンズ……
 アルフィー……
 アンダイン……
 フラウリーも!

パピルス
 オレだって!
 オマエが信じられればの話だぞ!
 ニャッハッハ!

パピルス
 ハ……

パピルス
 ……ま、オマエはもうオレの苦労のことは知ってるだろうけどね。

パピルス
 オレたちはそんな中で生きてるんだ。

パピルス
 それでもオレは信じてる、オマエがこれから何に直面しようと……

パピルス
 きっと大丈夫だって!

バッター
 ……。

パピルス
 バッター、オレにはよく分かるぞ、オマエの中には良い心がある。

パピルス
 何で分かるのかって?

パピルス
 オマエがずっとそこに立って、オレの話を聞いてくれてるから!

パピルス
 そこにオマエの一側面が現れているのだ……
 「本当の」オマエ……
 思いやりがあって、良いことをしたいと思っているオマエだ!

パピルス
 バッター、教えてくれ……
 オマエは良いことをしてきたか?

バッター
 私はこの世界を浄化している。

パピルス
 でも、浄化は良いことなのか?

バッター
 ……私は悪しき亡霊に穢された世界を浄化してきた、邪悪なる者どもに報いを……

パピルス
 バッター、そうじゃない、オレの話を聞いてくれ。

パピルス
 浄化は「良いこと」か?


バッター
 ……私は……

パピルス
 ……。


パピルス
 なあ、バッター。
 ツラいよな……
 こんな風に自分のやってきたことと向き合うのは。

パピルス
 今ここで、オマエの考えを変えようとは思わない。

パピルス
 ただ、オマエに覚えておいて欲しいんだ……

パピルス
 きっと大丈夫だってこと!

パピルス
 きっとな……

パピルス
 オマエは先に進まなきゃいけないんだろう。

パピルス
 ここからは、自分の生き方は自分で決めるのだ。

パピルス
 オレ?
 オレにはもうやるべきことはほとんど無い。

パピルス
 オレにできるのは、ここをどくことだけだ……

パピルス
 そしてもっと大事なのは、信じること。

パピルス
 トモダチとの思い出を信じること……
 アズゴアと、タマシイを信じること……

パピルス
 オマエを信じること!

パピルス
 ……。

パピルス
 ……。


 (パピルスはあなたを見逃した。)

パピルス
 ……オレたちはきっとまた会える……
 別の時間軸でな、そこではひょっとしたらオレたち……

パピルス
 ……トモダチかもな?

パピルス
 ……。

パピルス
 オマエには良い心がある、オレが約束する。
 忘れないで。

パピルス
 オレに引き止めさせないでくれ。