四の五の

OFF派生のまとめとか洋ゲーの和訳とか

Sincere Deceit おまけその3:書籍・メモ

JimJam氏制作のOFF派生作品「Sincere Deceit」の邦訳記事です。
ゲームのダウンロードはこちらから。
※プレイヤーの名前は「プレイヤー」に置き換えています。
※メインストーリーのみの翻訳です。実際にプレイしている際の補助として使うことを想定して作っています。メインストーリー以外の要素(NPCの会話、謎解きなど)は是非プレイして確かめてください。
※OFF非公式日本語版未プレイにつき個人訳準拠です。意訳・超訳・誤訳あり。
(前→おまけその2:アウトサイド関連イベント
(次→おまけその4:セーブブロック2

 


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●ゾーン0
☆最上階
「Rules of Combat(バトルの掟)」
*ページ1:イントロダクション
 この世界には形も、大きさも、実体化の程度もさまざまなモンスターが存在する。下級亡霊も凶悪なグールも、みんな君の命を奪おうとしてくるだろう。この本は、浄化の旅につきもののエレメントによる攻撃を生き抜く助けとなるべく書かれたものである。この本の知識があれば、君も一流の浄化者になることができるぞ! より詳しい情報については、姉妹本「5つのレッスンで学ぶ宇宙一のバトルマスターになる方法」を参照してほしい。

*ページ2:エレメント
 すべてのモンスターは1種類ないしは2種類のエレメントタイプに属する。エレメントはモンスターを分析した際に印で示される。単一のエレメントは下図の関係性に従っている。2種のエレメントはそのエレメントに対してのみ耐性を持つ。「シュガー」はすべてのエレメントに対して耐性を持つが、状態異常には弱い。

*ページ3:バトルにおける記号
 多くの特殊技は、バトルで使用するとさまざまな記号が出現する。バフ技の場合は使った相手と記号が青く光り、デバフ技は使った相手と記号が赤く光る。これらの技では、下記の記号の1つが常に出現する。

*ページ4:亡霊とグール
 亡霊:半分実体化している霊体。宙に浮き、壁をすり抜ける能力を持つ。バット攻撃に弱く、アドオン攻撃に強い。
 グール:どんな環境下でも生きられる凶暴な生物。より実体化した身体を持ち、しばしば棘や角や毛髪などが生えている。アドオン攻撃に弱く、バット攻撃に強い。

*ページ5:状態異常
自然回復するもの:
Blinded:通常攻撃がミスしやすくなる
Muted:特殊技が使えなくなる
Asleep:行動できなくなる
Furious:自動的に通常攻撃を行う
Madness:味方や自分自身を攻撃する
Lethargy:少しの間、素早さが半減する

治癒が必要なもの:
Poison:毎ターン5%ずつHPが減少する
Venom:毎ターン5%ずつCPが減少する
Burning:毎ターン10%ずつHPが減少する
Toxin:毎ターン10%ずつCPが減少する
Palsy:行動できなくなる
名前の隣にアスタリスク(*)がついているモンスターは、2種類の状態異常(例:Poison/Burning、Toxin/Venomなど)に耐性を持つ。


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●ゾーン1

☆アルマ・西側隠しエリアの部屋
机上のメモ
 穢れの澱んだ場所からは霊的な残留物が生じることがある。これらは蛇のような姿をしており、身体は細く希薄で、頭があるべき場所には穴が空いている。
 これらはゆらゆらと漂い、触れるものをことごとく感染させる。こうして次から次へと病を広めているのである。
 感染者が疲弊すると、高確率で「ダスク」となる。

右から二番目の棚
 ほとんどのダスクは大昔から存在していると考えられている一方、新たなダスクが常に生まれうることも分かっている。
 バーント現象と同様、感染者が極めて強いストレスを受けると感染者に変化が生じることがある。
 取りうる姿は、そもそもダスク化がどのような状況から引き起こされたかということに加えて、感染者がどの程度穢れを取り込んでいたかということにも依存するようである。

右から三番目の棚
 ダスクは人型のものが最も有名だが、より奇怪な姿に変化するケースも目撃されている。
 そのような姿を取ったダスクは近づくものに襲いかかるようになる。あるいは無気力になり、悪意ある詐欺師と化す。
 物体に憑依するケースもある。マネキンのような人型の物体に憑依するケースが最も一般的である。

一番左の棚
 ダスクは遥か昔の時代の遺物であると考えられている。この奇妙な亡霊は、穢れが根づいた場所に多く集まる。
 その理由は今のところ分かっていないが、穢れた汚物に群がり食べているというのが定説である。


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●居住エリア(Residential District)
☆東部・駐屯所
※2階・パスコード(65238)を入力した先の部屋
机上のメモ

 名前:マラキ
 居住エリアのリーダー。
 武闘派として知られ、ナイフを振るい、敵をバラバラに切り刻む。
 洪水発生の直前、南のアパートに閉じこもったという報告を最後に音沙汰がない。
 閉じこもる前の彼は、よく激昂して鳥の話を喚き散らしていた。予測不能な状態であるため、接近する際には十分な警戒が必要である。


 名前:ジェイドン
 娯楽エリアのリーダー。
 彼に関する情報は少ない。精神攻撃に長けているという噂がある。
 彼が実際にそれを使う場面を誰も目撃したことがないため、単なる推測の可能性もある。噂が本当だった場合に備え、警戒はしておくべきだろう。


 名前:ガイウス
 工業エリアのリーダー。
 3人の中ではもっともオープンで、工業エリア内の施設を歩いているところをよく目撃されている。
 彼の戦闘スキルは現時点では不明である。他のリーダーたちと話す前に、まずは彼と話してみるといい。
 敵意はほとんど感じられないため、交渉に応じる可能性がある。彼と同盟を組むことでこのゾーンの安定につながるかもしれない。


 名前:エイブラム
 アルベラのリーダー。
 彼についてはまったく情報がない。居場所も不明である。
 彼を知る人々は、彼が頭上にも足下にもいると息をひそめて話す。意味不明ではあるが、彼を探すうえで重要な手がかりとなるものかもしれない。
 彼を見つけ、このゾーンおよび住人の安全に関する交渉を行うことが我々の使命である。
 我々の条件を呑まないようなら彼にはリーダーの座を降りてもらう。大勢の住人の生活を破壊し続けている彼の怠慢を許してはならない。


☆マラキ撃破後の居住エリア
※最南部・アパートB棟8階 Supreme Aerialがある部屋の西
机上の日記
バッター
 机の上に紙束がある。日記の一部のようだ。【→Read the pages】


 考えたことや感じたことをこれに書いて、と日記を渡された。それがオレたちにとって楽しい課題になるとジェイドンは考えているらしい。付き合ってやろう。


 自分のことを書いたほうがいいか。オレはマラキ、この新しいゾーンのガーディアンの一人だ。友だちのジェイドン、ガイウス、エイブラム、ザフキエルと一緒にここへ来た。


 ガイウスはいつも忙しくてあんまり話はしないけど、ジェイドンとエイブラムとは仲が良い。ザフキエルはオレたちの誰とも滅多に喋らない。


 ザフキエルにはそういう気高さがある。オレもあんな風に落ち着いていられたらなあ。


 オレたちのゾーンは、肉とプラスチックに分かれた海の真ん中に浮かんでる小島だ。小ぢんまりとしたところだけど、いずれここを素晴らしい場所にしたいと思ってる。


 今はオレたちが寝泊まりに使う建物が2、3あるだけだけど、じきに無の世界から引き上げた魂たちのために家を作るつもりだ。


 オレたちのリーダーは、このゾーンをオレたちだけでなく、ここに来ることを望む人々みんなのための安息の地にすると言っている。ここをみんなの故郷とし、オレたちは諸手を挙げてみんなを歓迎するんだ。

【→Keep reading】

 最後にこの日記を書いてからずいぶん経った。オレたちは着実にアルベラの建設を進めている。


 オレのエリアは、今や大都市の中心地となった最初の拠点から南に行ったところにある。


 自分たちに課せられた役目のうち、オレは住居に関する役目を請け負うことにした。人々に居場所を提供できるようになるということが、オレにとっては一番大事なことだ。


 ジェイドンは人々に健全な娯楽を、ガイウスは仕事を提供する一方で、オレは心安らぐ平和な場所を提供するということをひたすらに追求することにした。


 エイブラムはそれで大昔の知り合いを思い出したらしいけど、それが誰なのかについてはついに詳しいことを言わなかった。いつかはそういう話もできるようになるかな。


 エイブラムがもっとオープンになってくれたらなあ。さらに仲良くなれるのに。

【→Keep reading】

 オレとジェイドンはよく一緒にいる。あいつは良い友だちだ、住人のために作ったアトラクションを嬉しそうにオレに披露してくれる。それを見るとオレも笑顔になる。


 初めはうまくいかないんじゃないかって不安だったみたいだけど、それ以来あいつは自分の殻を破って、オレに心を開くようになった。オレを笑わせてくれる人に出会えるなんて思ってもみなかった。


 あいつとはすぐに大親友になった。あいつの幸せのためならオレは何でもしよう。

【→Keep reading】

 数年ぶりにこの日記を発見した。存在を忘れるのを止めにしないとな。変な場所に置かないようにすればいいのかな。


 最後に日記を書いて以来、状況は一変した。平和だったオレたちのゾーンは、いま外部勢力の攻撃を受けている。この世界の女王が生きていて、オレたちを滅ぼそうとしているらしい。


 女王の送り込む亡霊が、オレたちの防備を少しずつ削り取っている。早く策を講じないとオレたちみんな死んでしまう。しかし女王は何故こんなことを? オレたちが何かしたってのか?


 オレとジェイドンが応戦している間に、エイブラムとガイウスが最善策を考えてくれている。人々がさらに命を落としてしまう前に、二人が何か思いついてくれることを祈ろう。

【→Keep reading】

 人生最悪の日だ。ジェイドンがアイツらにやられるところを止められなかった。ジェイドンが二度と元に戻れないんじゃないかと不安で仕方がない。


 ガイウスの助手が来て、亡霊の襲撃でオレの無二の親友が殺されかけたことを話した。ガイウス自身が来なかったことが癪に障る。友人にそれを伝える暇もないほど忙しいのかよ?


 化け物はジェイドンの手足と眼を奪い、そのせいでジェイドンはもう昔の彼とは似ても似つかない。人を惹きつける笑顔もユーモアのセンスも失ってしまった。残ったのは抜け殻だけ。


 あいつがこうなるのをどうしてオレは止められなかったんだ? エリアに出現した鳥の怪物どもと戦っている間にあいつに怪我を負わせてしまった。あいつはもう元の身体には戻らないだろう。


 オレはあいつを裏切ったんだ。

【→Keep reading】

 この戦争はオレたち全員をじわじわと蝕んでいる。オレは出来る限り抵抗を続けているものの、他のみんなは閉じこもってしまった。勝てると思ってるのはオレだけなのか?


 ジェイドンは最後に会った時からさらに容体が悪化している。昔のシャイだったあいつとは別人のような振る舞いをする。オレを憎んでいるんじゃないかと思わせるようなトゲトゲしさがある。


 あいつは大昔にエイブラムからもらった猫のぬいぐるみを握りしめ、オレと一緒に読んだ本がある小部屋に隠れていた。これが最後とばかりにオレに罵詈雑言を浴びせ、それ以降オレの前に姿を現さない。


 かつての親友に何が起きたのだろうか? あいつがオレを一番必要としていたときに手を貸してやれればよかった。こんな状況になるのを止められたかもしれない。こんな辛さも心の痛みも全部感じずに済んだかもしれない。

【→Keep reading】

 エイブラムが消えた。何があったのかは分からない。あの塔でやっていることについてザフキエルは話そうとしないが、嫌なことが起こりそうな予感がする。


 何かがオレの心を引きつけている。遠くで鳥がさえずっているようなかすかな音。まさか勲章代わりに持っているあの首か?


 馬鹿げた話だが、音はどんどん大きくなっている。オレに何かをさせようとしているらしい。それをやればこの音も消えるのかもしれない。

【→Keep reading】

 あの主の頭を被るようになってから鳥が集まってくる。今やオレがアイツらの新しいマスターとなったわけだ。鳥たちはオレに語りかけ、見つめ、ありとあらゆる過ちを糾弾し続ける。


 鳥たちは語る。ジェイドンが壊れてしまったのはオレのせいだと。亡霊を食い止める力が無かったのはオレのせいだと。エイブラムが消え、世界が穢れに呑み込まれているのはオレのせいだと。


 オレにはもう誰も要らない。独りになりたい、そうすれば星を眺めていられる。オレの心に安らぎをくれるのはあれだけだ。


 他の連中なんて知ったことか。このゾーンだってそう。ここまで上がってきたヤツはみんな殺して鳥のエサにしてやる。


 ヤツらにはそれがお似合いだ。全員自分の罪を償うべきだ。


 一人残らず穢れに呑み込まれてしまえばいい。その暁にはオレの復讐はついに果たされる。


 この身体をもっとふさわしい姿に変えることができるようになるまでは、このままでいよう。それまで苦しむ人々を見下ろして嘲笑うことにしよう。


 時が来たら、オレは今一度灰の中から蘇るんだ。


 オレにはもう誰も要らない。


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●ゾーン2
☆図書館1階
左下の棚:「Four Souls(四つの魂)」
 ひとり、ひとりと魂は堕ち、
 ついにはなにも残らず。
 闇の内にて彼ら叫ぶも、
 咎むるべき者を知らず。
 闇の内にて見つけしは、
 見たこともなき奇なるもの。
 慈悲あるものとみな信じけり、
 それが変革を囁くゆえに。
 四つの魂は力を合わせ、
 己が国を造りたり。
 しかし間もなく袂を分かち、
 己が死の種を撒けり。
 いずれその命刈る者現れ、
 彼らは恐怖に慄かん。
 ひとり、ひとりとみなは堕ち、
 その首は身より離れん。


☆図書館地下(隠しエリア)
上段の棚:「The Serpent Who Ate the Sun(太陽を呑んだ蛇)」
 その日、天が開き、そこから大いなる闇が現れました。闇は巨大な黒蛇のごとく太陽の光を呑み込んでしまいました。それ以来、街は輝きを失いました。
 世界は闇に覆われ、生気を失っていきました。かつての世界の抜け殻と成り果てました。
 人々は、この地獄がいつ終わるかも分からないまま絶望の中で生きています。我々は向き合うべきなのかもしれません。世界はもう二度と元に戻ることは無いのかもしれないという、厳しい現実に。

中段の棚:「The Shadow on the Walls(壁の中の影)」
 その日から黒いものがこの世界に染み出るようになりました。それは天井からも壁からも滴り落ちて、触れるものすべてを腐らせてしまいます。腐ったものたちはなおも存在し続け、周りのものを汚染しながら嘆きの中で生き続けます。
 影の源の正体は分かりませんが、いつか終わりが来ることを我々は願い続けています。天を仰ぎ、いつの日か太陽が戻ることを祈るのです。

下段の棚:「The Harbinger of the End(終焉をもたらす者)」
 バットを持った男。世界が終焉を迎えると、バットを持った男が必ず現れる。その理由は何か? 誰もその理由を知らず、疑問にも思っていないらしい。死がなぜそのようなシンプルな姿を取るのだろうか? 終焉が近いことのサインがなぜいつもそのような形で現れるのか?
 眼前に待ち受ける危険にほとんどの者が気づかぬまま、我々は生き続ける。限られた者にしか見通すことのできない悪意ある循環。あの男がもたらす真実を信じることを、みなきっと望まない。


☆居住区・南にある隠しエリア
本棚:「The Nothingness(無の世界)」
 無の世界には分かっていない部分が多い。我々の世界が絶え間なく変化し続ける一方で、無の世界は不変である。無の世界はいわばハブであり、ポータルのような入口を通じて各ゾーンをつないでいる。無の世界がなければ、ゾーン間を移動することは不可能だ。
 そんな便利な無の世界は、立ち入るのがもっとも恐ろしい場所ともいわれている。無の世界は暗く、しばしば奇妙な囁き声が響き渡る。その囁きが何を語っているのかは誰一人知らないが、多くの人々が、意味不明な言葉に交じって「コロセ」という言葉を聞いたと述べる。得体の知れない悪意ある何かに見られているように感じたと述べる人々もいる。それらが本当のことなのか、それとも暗闇の中で疑心暗鬼になった頭が生み出した産物なのかということは推測するほかない。


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●娯楽エリア(Entertainment District)
☆ファンハウス内部・西側の書架エリア
右上の棚
 原初の泥濘から這い出た我々は、この世界へと入り込んだ。我々は人間の抜け殻。長きに渡って使われた後、新しきもののために捨てられた残り滓だ。
 先駆者が我々の誕生を祝って晩餐に招いてくれた。彼は、我々の手で楽園を作ろうと言った。我々はいずれ現れる後続者たちのために、先例を作ることにした。

右下の棚
 我々は四方それぞれに自分の土地を開拓することにした。我々の中で一番の年長者と先駆者の導きで、見事な配色と配列の街並みが出来上がった。
 作品の出来に満足した我々は、その恩恵にあずかる人々を呼び寄せた。全てが順調で、人々は満ち足りて幸せだった。だがそんな日々はすぐに終わりを迎え、歴史は再び繰り返すことになった。

左下の棚
 我々を生んだあの闇から、奴らが現れた。彼女が我々の計画を聞きつけ、我々の故郷を奪うべく兵を送り込んだのだ。野には火が放たれ、人々は死の恐怖に怯えながら暮らすようになった。
 年長者と先駆者は怪物たちを討つ刃を研ぎ、我々は戦争の準備を整えた。だが、我々全員が戦闘を得意とするわけではない。刃を振るうことができるわけではない。

左上の棚
 戦闘の最中、私は双頭の亡霊の片割れと戦った。私は対称性を奪われ、瀕死の重傷を負った。対称性の持つ美と、そして孤独とを理解したのはその時のことだった。
 私には剣を振るう力は無いが、心の力はある。あの怪物は私への贈り物だった。私自身と、そして私の作品を完璧なものにする方法についてひらめきを授けるものだった。私は清浄で完璧な存在になるのだ。


☆ファンハウス内部・西側書架エリアから南に行った通路の先
左側の机のメモ
 僕は彼を手に入れる。彼を僕のものにして、僕はもう一度完璧な存在になる。僕と彼とは二つで一つ……人形遣いと、清き銀糸に吊られて踊る完璧な人形となる。
 あの出来損ないの道化はもう要らない。このゾーンの連中もろとも焼け死ぬところを見ていてやる。しかるべき報いを受けるがいい。

右側の机のメモ
 彼を手に入れたら何が起こるだろう。完璧な状態になったと心から感じられるようになるのだろうか。何も変わらなかったらどうする? 怖い。もうこんなのは嫌だ。
 身体が弾け飛びそうな思いをするのは嫌だ。こいつが僕を生きながら喰い尽くしてしまう前に僕の中から追い出してくれ。こいつは僕を殺して僕の天使を奪う気だ。


☆ファンハウス内部・東側書架エリア
右下の棚
 身体の一番良い部分をもぎ取ってやると、彼らはのたうち回った。自分が完璧なるものの礎になろうとしているのだということが分かっていないのだろうか。
 もし彼を奪い返すことができなかったら、代わりを作るのもいいかもしれない。それを見せた時の彼の表情が楽しみで仕方がない。
彼に見せることを思うとそわそわする。吐きそうだ。彼はきっと僕の作品を気に入ってくれるだろう。とりわけ、それがあの糸を切り裂いた時には。


☆ファンハウス内部・北側 肖像画エリアにある隠し部屋
手前の日記
 今日、僕はこの世のものとは思えないほどに美しい天使が僕の領地に入ってくるのを見た。密かに使っている労働者たちの目を通じ、彼の姿と、その堂々とした佇まいを見て、惹きつけられた。
 彼を固く縛る糸を操っているのは、邪悪なる怪物。あの天使を僕のものにするためには、あいつを打ち倒さなくてはならない。
 だがあいつは狡猾で、僕の舞台を荒らし、僕の手から糸を奪い去った。あの糸をブッツリと切って、僕のものを二度と操れないようにできたらどれだけよかったか!
 僕の領地に入ったものはみんな僕のもの、僕だけのものだ! 僕が生きている間は彼を渡してやるもんか!

右奥の日記
 彼が探索している間、僕は彼の様子を書き留めた。歩き方、話し方、振る舞い方。ひとつも見逃さなかった。ようやく彼を操れるようになった時、僕は彼が抵抗するのを感じることができた。
 やはり彼は僕にピッタリだ。今の身体はじわじわと衰えていっているが、彼がいれば僕はまた完璧な存在になれる。彼なら僕の内に渦巻く穢れを押しとどめてくれるだろう。
 そう考えると、僕の中にいる「アレ」が激しくのたうった。終わりが来るのを恐れているのか、それとも期待しているのか。恐らく、両方だ。
もしうまくいかなかったら、僕よりもっとふさわしい宿主として彼の身体を使ってもいい。あの亡霊に彼の身体を喰らわせて、このボロボロの身体から出て行ってもらうんだ! あともうちょっとだ、それで全部終わる。
 何があろうと彼は僕のもの、僕だけのものだ。あの亡霊が彼を食らい尽くしたとしても、僕が魂を吹き込んであげよう。

左奥の日記
 人間の肉体は、ダスクをしばらく内側に留めておくことしかできない。それらは不完全であり、何度やろうと必ず失敗する運命にある。腐り果てて、その殻の中で魂同士が争い合うことになる。
 残りはあと一体。完璧とは言えないがおおむね成功している。僕のものを手に入れるのにきっと役立つはずだ。
 目的達成のために必要なだけだから、その後は他の出来損ないと一緒に捨てておこう。


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●ゾーン3
☆モノレール整備室
※1つ目のエリア
北西の部屋にあるメモ
 エリア1で奇妙な生物がモノレールから出てきたという報告が作業員から上がっている。
 猫の仮面をつけた男を見たという報告もあれば、真っ黒な芋虫のモンスターを見たという報告もある。
 それがどこから現れたのかは不明だが、最初に目撃されたのはモノレール整備室だった。
 所長からは、化け物に近づくなという通達が出ている。
 化け物を見かけたら、どんな形であれ近づこうとしてはいけない。所長によれば、化け物は敵意を向けない限りこちらには手を出してこないそうである。


☆エリア4・右棟地下
※研究室
左の机のレポート
 エリア4に出現した奇妙な黒い物質の発生源に関する研究が始まった。
 どの実験も決定的な結論を出すに至っておらず、詳しいことはほとんど分かっていない。分かっていることはただひとつ、黒い物質に触れた者には甚大な被害が生じるということだ。
 その粘性のある液体に触れた者には変化が生じる。皮膚の黒ずみ、表情の欠落といった共通の症状が現れる。
 それらの症状はバーント化現象と気味が悪いほど類似しているが、規模はより大きい。
 ハイブ・マインドに近い現象も認められる。彼らは廊下をさまよいながら、同じ話を口にする。
 より善きもののためにこの世界を変えようとしている人間のことをだ。これは本当に生物学的な病原体によるものなのだろうか。それとももっと別のものが?

右奥の机のレポート
 どうやらこのゾーンにいる亡霊も、穢れに汚染されているらしい。
 汚染された亡霊は獰猛で、穢れに冒された人々と同様の膨張した目と蔓状の部位が認められる。
 穢れの発生源と亡霊との間に何らか関連性があるのかについて、さらに研究を進めなくてはならない。
 私は、汚れを広めているのは亡霊なのではないかという仮説を立てている。亡霊は我々にとって常に悪しきものであったのだから。

※最南端の部屋
机上のメモ

 何もかも変だ。僕の周りの人々はみんな変わってしまった。そして、僕自身も変わり始めている。
 僕までああなるのは御免だ。僕は他の連中の二の舞にはならない。
 もうこの頭の中に響く声を聞きたくない。皮膚の下や胃の中をアレが動き回るのを感じていたくない。
 アレが他の連中と同じように僕を喰らってしまう前に、僕は消える。あいつらの一員にはならないあいつらの一員にはならないあいつらの一員にはならないあいつらの

バッター
 同じ文章があと数ページ続いた後、途切れている。最後のページは黒い染みで覆われている。

バッター
 ただのインクだろう。


☆エリア4・左棟
※化学実験室
棚の本(強い腐食性を持つ酸(a highly corrosive acid)に関する本)
 硫酸(Sulfuric acid)は強い腐食性をもつ物質で、日常生活でも様々な用途で用いられる。一般的には、有機体および金属を焼却するために使う。また、砂糖を炭化し、強いカラメル臭のする黒い物質を生成することでも知られている。
 この強力な酸を生成するには主に3つの材料が必要である。一つ目は過酸化水素(Hydrogen Peroxide)で、一般的には傷の消毒に用いられる液体である。この液体を反応性ガスの二酸化硫黄(Sulfur Dioxide)と混合する。最後の材料が水(water)で、これはかつて水和のために使われていた貴重な液体である。
 まずはガスを過酸化水素溶液に吹き込んで二酸化硫黄を溶け込ませ、亜硫酸(Sulfurous acid)を生成する。これが終わったら、亜硫酸を水に加える。これにより亜硫酸が酸化し、硫酸ができる。沸騰して怪我をするので、水を直接亜硫酸に注いではいけない。常に亜硫酸を水に注ぐようにすれば、飛び散る可能性を減らすことができる。


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●工業エリア(Industry District)
☆西部・鉱山地下
※「Cavern Key」で開く3つの部屋・中央
バッター
 机の上に木に関するメモがある。 【→Read the notes】


 樹木に関する実験#21
 概要:人工樹のサンプルに水晶の断片を接着。
 仮説:水晶は強力な薬効を持つため、これを用いることで医療目的での利用が可能な樹木を作ることができると考えられる。
 結果:数か月後に樹木は未知の形状に成長。樹木は発光性を有し、これまで以上に有機的になった。
 この洞窟で採掘される水晶には、生体から不純物を取り除く性質があるらしい。他の生体にも適用できるかどうか、さらに試してみることにする。


※ペダロで行ける西側の小部屋のメモ
バッター
 机の上にメモがある。 【→Read the notes】


 実験の結果、この洞窟を構成する物質は我々の世界のどの物質とも一致しないことが明らかになった。研究の末に、我々はこれがかつて「土」と呼ばれていたものであると結論した。


 同様に、我々が新種のプラスチックだと思っていたものは「水」であった。この2種類のエレメントは遥か昔に失われたと考えられていたが、いくらか残存していたようである。


 引き続き鉱山の採掘を続け、可能な限り物質を収集することにする。首尾よくいけば、我々はこの数百年間世界で誰も見たことがない生命を創ることができるかもしれない。


※ペダロで行ける最西端の小部屋のメモ
バッター
 机の上にメモがある。 【→Read the notes】


 この洞窟の壁に発生する水晶に、上層部が強い興味を示している。水晶の内部には大量のエネルギーが蓄えられているらしく、様々な用途に使える可能性がある。


 初めは水晶を医療目的で使う予定だったが、今ではある計画の一部となっている。上層部はその計画で戦争の流れをひっくり返したいようだ。


 最初の実験がもうじき終わる。
 この困難な状況を彼が切り抜けてくれることを祈る。


※ペダロで行ける東側の小部屋(コンピューター部屋)
左奥のメモ
バッター
 机の上に「サラティエル」についてのメモがある。

ローランド
 い、行きましょう! 今は工場に向かわないと。 【→Read the notes】


 この一か月でサラティエルは急激に成長している。もはやコンテナに収まりきらず、より大きな施設に移動させる必要が出てきた。


 彼女を研究所の収容エリアに移動させるための準備が始まった。

ローランド
 ……無事だといいけど……

壁の研究メモ
バッター
 壁に研究メモが貼られている。【→Look at the notes】

#F0-829 サラティエル
XXXX年3月2日
ブロック:F
状態:健康

名称:サラティエル

サラティエルの部屋の立ち入りが許可されているのは関係者のみである。本紙裏面に記載された職員が同伴している場合を除き立ち入りを禁ずる。

更新ログ #1D32
 サラティエルは成長を続けている。私と研究チームは、彼女の世話役を最大2名のみ許可している。私が彼女を世話する際の補佐として農場から1名雇ったので、2人で彼女の親代わりになろうと思う。

更新ログ #2D61
 私が多忙の間、作業員のエレミヤがサラティエルをしっかり世話してくれている。サラティエルはよく食べ、群れの中で過ごし、強く健康に育っている。グールを飼育するとまるで外来種のペットのようになるのは興味深いことだ。もちろん危険な存在ではあるのだが。

更新ログ #3D120
 E0シリーズのプロジェクトに新展開があって、サラティエルの行動記録をあまり追えていなかったことに気がついた。以降の更新ログはエレミヤに任せよう。


※ペダロで行ける東側の小部屋(本棚がある部屋)
左上の本棚

 被験者#1:マラキ
 肩書:居住エリアガーディアン
 汚染タイプ:グール化
 状態:死亡

ローランド
 彼を助けてあげたかった。でも、このほうが良かったんでしょうね……

右上の本棚

 被験者#2:ジェイドン
 肩書:娯楽エリアガーディアン
 汚染タイプ:亡霊の憑依
 状態:死亡

ローランド
 悲惨な最期でした……今は安らかに眠れているといいのですが。

左下の本棚

 被験者#3:ガイウス
 肩書:工業エリアガーディアン
 汚染タイプ:調査中
 状態:生存

ローランド
 こんな記録、ここに保管した覚えはありません。誰がどうしてガイウスさんを調べているのか突き止めないと。

右下の本棚

 被験者#0:アダム
 肩書:看守長
 汚染タイプ:SERPEGODGODGODGODMACHISERPEGODGO
 状態:生存

ローランド
 ……あれは何もかもがめちゃくちゃでした。


☆工場
※2階・ガイウスのオフィス
パソコン脇のキャビネットの書類:「Section A」

 ガイウスへ。
 君が創ったあの子どもだが、研究のために君が引き取ってくれないか。
 実験の成功は喜ばしいことだが、あれは完璧ではない。あれは我々が生命を創り出せることを証明したし、そのために必要なプロセスに関する知見も与えてくれた。
 だが私は別の方法を取りたい。あの子は私が求めている子ではなかった。今後は君が世話をすべきだ。
 今後も折に触れて状況確認のためにあれを訪ねるつもりだが、他は君に任せる。
 ちなみに、可能であれば君のチームが作っている木をもっと中庭に植樹して欲しいと教会から依頼があったよ。 -ザフキエル

バッター
 書類の下に小さなメモ書きがある。実験は成功したようだが、その数年後に被験者が逃走したらしい。

パソコン脇のキャビネットの書類:「Section Z」

 ガイウスへ。
 君が重視する科学の進歩のため、新しい生命を創る方法を研究しているそうだね。
 なら、君と協力関係を築きたい。新しい生命を創り出す術をこの世に生み出そう。我々の技術を組み合わせればきっと実現可能だ。
 君も知っているかもしれないが、その手のことに関して私はエイブラムほどの力はない。彼に何かあった時のことを考えると、協力した方が我々みんなにとって有益となるだろう。
 もし君がこの協力関係に疑念を抱いているのならひとつ教えてあげよう。私はとある物を手に入れた。それがあれば君のマシンの性能を、生命を創り出せるほどに高めることができる。
 この申し出はぜひ検討しておきたまえ。これは君が今後必要になるかもしれない資金や資源を保証するものだ。私にとっても我々の輝かしく清き功績を世に広める術となる。
 できるだけ早く返事をくれ。 -ザフキエル

バッター
 書類の下に小さなメモ書きがある。協力関係は初めは成功したように見えたが、最終的には完全に崩壊したらしい。


☆工場地下研究所3階・サンプル収容室
※最初の通路
【サンプルJ7-008】
部屋の中の壁のメモ
この書類はガイウス情報管理協会により承認済みである。目次記載のシリアルナンバーを引用すれば自身のプロジェクトに使用してよい。

著者:ガイウス

グールの遺伝学
 一般的なグールは野生動物のようなもので、現在我々が飼育している動物と同じように飼いならすことが可能である。ヒトの一生分の期間内にグールの世代を重ねることで、グールを飼いならすことができるのみならず、辛抱強く待てばどんな姿にも変えることができる。
 予想外にも、我々はグールの遺伝子が2種類の生物に存在していることを発見した。両者は基本的には同じ種である。一方のグールは遺伝物質を含むものを生み出し、もう一方のグールがそれを取り込む。そして変化期間を経て、両方のグールの遺伝子を半分ずつ受け継いだ小さな生物が誕生する。
 実験中、我々の研究チームはこの現象が生じるまでの行動、および各世代で生じる違いに着目した。後に我々はグールと他の様々な種との間でもこれを行わせ、結果として驚くほどユニークな姿形を持つ生物が誕生した。これについては目下研究が進められている。
 こうした研究結果は、かつて物議を醸したダーウィン説理論とよく似ている。人々が不正確であると主張している理論である。宗教的な信念を持つ人々のことを見下すつもりはないが、この研究は、ダーウィン理論が私たちの世界について真実を述べていたということを示すものだと考えている。グールは我々の知りうるよりももっと前の時代の遺物なのかもしれない。それが正しいのであれば、この論文に刺激を受けて、かつての時代の真実を探ろうとする者が現れることを願う。
 最後に、私はこのようにグールを交配することの危険性を承知している。誕生したグールが潜在的に危険な存在だった場合には、誰のことも攻撃できない場所で適切に管理しているので安心してもらいたい。また、読者の中に自分自身でこれを試してみたいと思う者がいれば、これ以降に記載されている安全のための指示に従うことを勧める。

机の上のメモ
 ジェスカが脱走して以来、我々は彼女の弟の詳細な研究を進めている。彼も会話能力を持つとみられるが、その話し方はいささかたどたどしい。
 彼は私のことをパパと呼ぶ。最初は可愛らしいと思っていたが、今は彼が私を親として見ているということが嫌でたまらない。
 彼は文字が読めないから書いてもいいだろう。彼に気を許さないようにしなければならない。彼までいなくなれば研究の信用が落ちてしまう。
 彼を我が子のように扱うなど無理な話だ。彼はグールであってヒトではない。いずれ何らかの形で彼もそのことに気付くだろう。
 彼が先日の注射から回復したら、さらに実験を行う予定だ。経過良好なら彼は外の空気を吸いに出ることを許可される。
 彼が大人しくしてくれることを祈る。これを私の生活から切り離さなければ。どんな手を使ってでも我々は答えを見つけてみせる。


※2番目の通路
【サンプルA1-????】
部屋の中の壁のメモ
 この書類を受け取った者へ。君は私の個人的なプロジェクトに配属された。私がよく知るあるものと戦うためのプロジェクトだ。当プロジェクトへの参画に同意するなら、この情報を共同研究者たち以外には明かさないことに同意してもらう。
 私のオフィスには監視の目はないが、壁に耳ありということもあるので、この書類は機密とする。この書類のコピーは持っていても構わないが、君だけが見られるようにし、君の配置場所から出してはならない。さあ、これをよく読んで、君が今この世で最も重要な問題に関与していることを理解するといい。
 私は病気だ。我々の知るこの世界は病に冒されている。それは私と他のガーディアンたちの責任だ。黒いものが私の内側で大きく成長している。自分自身を義体化することでその黒いものの拡大を止めることができればと思っていたが、何かがそれを阻んでいる。これに抗うために私は自分の中にあった余剰物も残留物も全て取り除いたが、駄目だった。しまいにはその黒いものは意識を得た。君の役目はこの黒いものを保管し、調べることだ。
決して触れてはならない。同じ部屋に居てはならない。同じ空気を吸ってはならない。意味なくそれに関する話をしてはならない。この書類にも、今後作成する書類にもこの名前が歪めて記入されているのはそのためだ。何も知らない君の目を守るためだ。
 当プロジェクトの最終目標は、この生物を一片の欠片も残さず破壊し、可能な限り致死性を低めるための確立された方法を見つけ出すことだ。私の仮説としては、この生物の中に清きものを入れるというやり方が考えられる。この生物はコンテナのような振る舞いをすることがある。我々はあちらから実験の進捗を観察しようと思う。
 質問があれば私に個人的に聞くように。また、更新ログにある我々の進捗についても確かめておくこと。


※3番目の通路
【サンプルGEN314】
部屋の中の壁のメモ
#C3-GEN314
XXXX年1月22日
ブロック:Z
状態:完了

名称:アダム

当プロジェクトは終了した。技術的な成功は収めたものの、これ以上の継続は妥当ではないと思われる。詳細は以下の通りである。

警告
 この書類は公表するつもりはない。もしこの書類が私の意思でどこかに公表されたら、私が差し迫った状況に置かれており、研究が完了する前に死ぬ可能性があるのだと思ってもらいたい。
 このプロジェクトから全てが始まった。このプロジェクトは実施すべきではなかった。だが時間的な制約により、このプロジェクトの研究が我々に任されてしまった。
 このプロジェクトで我々は正気を失うことになるだろう。その損害を回避するべく、私は助手のローランドとともに全力で取り組むつもりだ。

最後通牒
 このプロジェクトを始めた当初、我々のチームはかつてのゾーンのガーディアンたちと同じ力を得る方法を探すという明確な目標を持っていた。だが成功を収めたのはたった1例のみで、この方法は危険が多すぎて不可能であると判断した。身体的変容、暴力性の増幅、ソシオパシーといった危険性を孕んでいたのだ。
 このプロジェクトで成功を収めた1例というのも、かろうじて成功と認められるという程度のものだ。上述の失敗点からすれば、名称としてより適切なのは「プロトタイプ」であろう。だがこの生物は既に我々のシステムに深く組み込まれていることから、技術的には成功したと考えるべきだ。我々の「ボス」も洗練させる前のあれのことを認めてくれた。
 よって、このプロジェクトは完了したものとし、私は自分自身と友人たちを守ることに専念する。彼らまで失敗してしまわないように、そしてこのプロジェクトで生じた失敗を埋め合わせるために、私が彼らを見守っていよう。


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●牢獄(Prison)
☆牢獄1階西部・病棟
4枚パネルのヒント
※右上の部屋(「Iron Tablet」のヒント)
 火は獣の腹より出でて、矢を求むる金属へと変える。力強く迅速に、行く手に在りしものを屠る。
 それは神の剣にして槍、太陽の黄金を求め、私を神へと近づけるもの。

※左上の部屋(「Copper Tablet」のヒント)
 水底から眼が見つめ返す。血を欲し、美しい水面をその虹彩と同じ朱に染めることを欲している。我が神の金属の雫をこの口に含む瞬間をどれほど焦がれていることか。

※左下の部屋(「Silver Tablet」のヒント)
 大地は金属から木を芽生えさせた。それは私にとって尊きもの。暗闇に差す光であり、影を切り裂いて私を神の腕の中へと誘うもの。

※右下の部屋(「Crystal Tablet」のヒント)
 鼻をつく澱んだ空気が、地底の鉱物のその向こうに封じられている。鉱物はまばゆい不気味な光を放ち、煙を吸い取っては清めている。それは神の鉱物であり、物事を正すものである。


室長室・ジェイドンに関する記録

 ログ1:
 ジェイドン氏が到着。容態は危篤。
 脊髄に損傷が見られる。技の反動なのか、両腕も切断されている。右目は患者自身が自分に寄生した亡霊を追い出そうとして抉り取ってしまった。
 患者は意識不明の状態で、追って連絡があるまで経過を見ることになった。彼はもう二度と歩けるようにはならないのではないだろうか。


 ログ2:
 一週間も意識不明の状態が続いていたジェイドン氏が目を覚ました。警戒しているものの元気は無い。何が起きたのかよく覚えていないといった様子だ。
 マラキ氏が来院したら話をしたいとジェイドン氏が申し出た。許可する予定ではあるが、ガイウス氏の指示により、何が起きたかをガーディアンに伝えることは禁じられている。
 ジェイドン氏は診断結果を聞いてもなお回復の見込みがあると考えているようだ。前向きなのはいいが、真実を受け入れないこの姿勢が、彼の今後の精神状態に影を落とすことになりはしないかと心配している。


 ログ8:
 ジェイドン氏がこの病棟の負担となっていることは、彼に関する最近の出来事から明らかだ。転院申請を出した。
 これ以上彼の言動で看護師や用務員が辞められてはかなわない。彼の「病気」の治療は我々には不可能だ。病気などと呼べるのかも分からないが。
 精査のため、ガイウス氏が彼を自身の医療施設へ連れて行くことになった。我々に関係する範囲では、やるべきことは終わった。


 ログ12:
 ヤツが看護師を殺して逃げた。あの部屋は当面の間封鎖することになった。
 部屋からは腐敗臭が漂い始めている。人々の目が痛い。ここは閉鎖しなければ、それも速やかに。本件に関する記録もこれで最後になるだろう。
 当施設は汚染されたため閉鎖する。今回の事件は隠蔽しておくことにする。私の目の黒いうちは、この施設内での出来事は誰にも知られることはない。


☆牢獄1階北西部・作業場
4ブロックパズル部屋の壁に貼られているメモ

 サラティエルには定期的に餌を与えるように。金属とプラスチックを混ぜたものを池に流し込むこと。その間、サラティエルは池に戻り餌を食べる。


 ウォーデンの命により、牢獄の主電源の定期メンテナンス時を除き、サラティエルの食事中に彼女の部屋に立ち入ることを禁じる。


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●塔(The Tower
☆第1階層:窓(Layer1: The Window)
北西・反転した部屋の壁に貼られているページ
 昔々、小さな赤い部屋に、寂しがり屋の男の子がいました。男の子はお母さんとお友だちに会いたいと心から願っていましたが、病気のために外に出ることができませんでした。
 部屋の中で日に日に弱っていく男の子は、大事に持っていた肉を使って新しいお友だちを創ることにしました。肉から生み出された「従者」は、男の子が息を引き取るその瞬間までお友だちでいることになりました。
 2人で過ごした時間は短いものでしたが、従者が部屋の外の世界に思いを馳せるようになるには十分な時間でした。彼は何が起きているのかを全て知っており、それを正したいと思っていました。そうすれば「父」は恐れることなく外に出られます。この上ない話ではありましたが、終わりが近いことを知る男の子は聞き入れませんでした。男の子は自分と一緒に全てを終わらせることを望んでいましたが、従者は違う考えを持っていました。そしてそれが、彼の最初の罪を生み出したのです。